九州発 気持ちは晴れ!

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バス乗務員 指導するとは

休日の午前11時、

博多駅から福岡タワーまで

バスを快調に走らせている。

 

平日とは違って、停留所間の時間も短縮されており、

ボヤボヤしているとすぐ遅れてしまう。

 

無理はしないが、信号の変わり目を読みながら、

行けるところは思い切って行く。

 

「天神ソラリアステージ前」が近づいてきた。

西鉄福岡駅と隣接しており乗降が多い。

ブレーキを掛け始めると

停留所付近に懐かしい姿が。

 

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新人時代にお世話になったN教官であった。

我々と同じ制服姿で乗降客の案内をされていた。

 

降車のため前ドアを開けると、

すぐ気付いてくれて、ドアまで来てくれた。

「元気しとうか?」「気を付けて行けよ」

 

マイクをしているので、私は笑顔でうなずくだけであった。

 

新人研修(一か月間)の初日、

研修センターの玄関にて、気合を入れて挨拶すると、

待っていたN教官が、「やり直し!」

 

新人の代表になり号令をかける時も

「声が小さい、やり直し」

 

いきなりキツイ洗礼を浴びてしまった。

 

他の新人には、それ程厳しく接していない。

「私が嫌いなのかな」

 

実車を使って研修所内の走行が始まった。

スラローム、クランク、S字。

自動車学校とは違って、

ギリギリの所にペットボトルやボンベが立ててあり、

切り方を間違えると当たるようになっている。

 

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「なかなか上手いな」

初めて褒められた。

 

しかし、バックのS字走行はしびれた。

とにかく後方が見えない。

11mは長い。

 

バックミラーに

腕組みした鋭い眼差しの教官が映る。

 

このまま後退すると障害物に当たるという所まで

ジッと見ている。

 

何とか切り抜けられるか。

こんな時、

すぐ横からいちいち言われると

混乱して、右左分からなくなるものだ。

 

ねばって助言を我慢してくれているのが伝わった。

 

教習は順調に進み、

私の同期は実技走行が優秀で、教官も安心されたようであった。

私も徐々に打ち解けてきた。

 

そして、

無事に30日の過程を終了し、

教官との会話でも冗談で返せるようになった頃、卒業を迎えた。

明日からは同期とも別れていよいよ配属先へ。

色々不安だ。

 

研修最後に個人面談があった。

「お前は代表だったから、特に厳しくしてすまなかった」

「バスの運転はなめて手抜きしたら怖いからな」

「俺もお前と同じくらいの歳で入社して、俺がやれてきたから、

 お前もできる。大丈夫だ」

あの厳しい表情はどこへやら。

私は30日間を思い出して、号泣してしまった。

 

何ともメリハリの効いた指導の素晴らしい教官。

 

あのバックミラーに映った眼差しと今日も同じ眼差し。

一瞬の再会であったが、嬉しさと共に、

絶対に事故は起こさないと初心に戻ることができた。

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新しい路線を覚える後輩が不安そうに

「ああ、覚えきらんですよ」

と相談されることがある。

 

そんな時、私は自分が体得したポイントを的確に伝授するとともに、

 

「俺がやれているから、あんたもできる。大丈夫よ」

 と

N教官のコトバを借りて、委縮しないようにアドバイスしている。